「貸倒損失」とは、債権のうち倒産により売上金が回収できなくなった際の万が一のために先行費用とした貸倒引当金を想定額上回る損失である、簿記の表記上では「経費」に該当、「〇〇」としての区分です。
概要
勘定科目の名前 | 貸倒損失 |
表示する場所 | 販売費及び一般管理費、営業外費用 |
計上時期 | 得意先や取引先が倒産した際に債権が貸し倒れたとき |
注意点 | 計上要件があり、税務調査に備えて必要な資料を整備必須 |
消費税区分 | 貸倒損失に含んだ消費税は、貸倒が生じた課税期間の課税売上に対して消費税を控除する。 ※免税事業から課税事業になった場合、売上債権があったとしても税額控除不可 |
試験レベル(日商簿記) | 3級 |
勘定使用難易度 | 難しい |
試験重要度 | 重要 |
実際重要度 | 重要 |
備考 |
貸倒損失の記載ルール

借方 | 価格 | 貸方 | 価格 |
---|---|---|---|
貸倒損失 | (売掛金、電子記録債権、受取手形等) | ||
(貸倒引当金) |
貸倒損失は「費用」と計上されます。
なお、発生する条件として、得意先(販売先)に売上をしてのち売掛金などを始めとする後もらい金の権利を得たものの、得意先がお金がなく倒産してしまい、売上をしたお金をもらえなくなってしまうというもの。
このため、せっかくお金をもらえた権利を失った損失枠として「貸倒損失」である。
確認1:貸倒引当金となるものを確認
貸倒損失を覚えていく前にまず念のために貸倒の対象となるものは以下の通り。
1 売掛金、貸付金
2 未収の譲渡代金、未収加工料、未収請負金、未収手数料、未収保管料、未収地代家賃等または貸付金の未収利子で、益金の額に算入されたもの
3 他人のために立替払をした場合の立替金(下記の「一括評価金銭債権に当たらないもの」の(4)に当たるものを除きます。)
4 未収の損害賠償金で益金の額に算入されたもの
5 保証債務を履行した場合の求償権
6 売掛金、貸付金などの債権について取得した受取手形
7 売掛金、貸付金などの債権について取得した先日付小切手のうち法人が一括評価金銭債権に含めたもの
8 売買があったものとされる法人税法上のリース取引のリース料のうち、支払期日の到来していないもの
引用元:国税庁:No.5500 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲
3級の問題の対象
貸倒引当金で習う、簿記3級で習うのは以下の3つ
- 売掛金
- 債権について取得した受取手形
- 電子記録債権
仕訳ルール1:貸倒引当金の残高がある場合はそちらから使う
貸倒引当金が設定している場合は、そちらから先に優先してから使用します。
しかし、倒産というのは予想が難しい場面もあるので売掛金などの売上債権が貸倒引当金を超えてしまうことも。
さて、まず例をあげますとB社が今月末に倒産することになり、売掛金¥37,000が貸倒れる見込みになったたため、貸倒れ処理する、なお、貸倒引当金の残高は¥20,000ある。
借方 | 価格 | 貸方 | 価格 |
---|---|---|---|
貸倒引当金 | 20,000 | 売掛金 | 37,000 |
貸倒損失 | 17,000 |
解説
まず、倒産することというのは売上の見込みが立たなくなったので貸倒れるという考えが出てきます。
そして、B社の売掛金は¥37,000はあるので、貸方に¥37,000に仕訳。
一方で貸倒引当金は¥20,000は残高があるので、借方にいれます。
ただ、ここで問題となるのが売掛金が貸倒引当金を上回るということ。
なお、損失なので、貸倒損失を以下のように計算して借方に入れます。
売掛金(37,000)-貸倒引当金(20,000)=貸倒損失(17,000)
仕訳ルール2:貸倒後の回収
なお、貸倒損失を処理後で、倒産した会社から売掛金がもどってくる場合があります。
ただし、仕訳をする場合、その回収が貸倒れたのが今年度なのか前年度かによって対応が変わってきます。
対応が変わる理由としては決算報告で一度「損失計上」で確定をしてしまっているため。
貸倒損失が今年度とそれ以降で変わるのは「取り消せる」か「取り消せない」かという違いで、決算報告をしてしまうと正式に消せなくなります。
仕訳ルール2-1:貸倒損失の処理後の現金回収は取り消す
貸倒れた今年度の場合は「貸倒損失」を取り消します。
今回の例を言うと、今年度に倒産したB社に対して売掛金¥37,000をすでに貸倒損失をしたが、本日¥10,000分が現金で回収できた。
借方 | 価格 | 貸方 | 価格 |
---|---|---|---|
現金 | 10,000 | 貸倒損失 | 10,000 |
解説
まず、今年度というワードが出てきたので、決算上の処理はまだ行ってませんので貸倒損失を取り消すことが可能です。
によって、現金¥10,000分が回収できるということになるので借方に入れ、貸倒損失は貸方に入れる
仕訳ルール2-2:前期分の貸倒損失の回収は貸倒損失を使わない!
今回の例を言うと、前年度に倒産したB社に対して売掛金¥37,000をすでに貸倒損失をして、そのうち¥10.000がすでに回収できたが、本日¥10,000分が再び現金で回収できたので処理する。
借方 | 価格 | 貸方 | 価格 |
---|---|---|---|
現金 | 10,000 | 償却債権取立益 | 10,000 |
解説
前提として、前年度に倒産し、貸倒処理したということなので、すでに決算処理を終わっています。
そのため、今年度分では損失取り消しをすることができないため、別途利益「償却債権取立益」という扱いで処理します。
なお、今回は現金による¥10,000分回収ができたということなので、借方に現金を、そして昨年の貸倒分が戻ってきて決算処理をしたので、今年度ではその取り返しをしたとことなので利益という名目にし「償却債権取立益」を入れます。
応用1:貸倒損失の時効は5年
2020年の改正税法(債権法)に基づき、貸倒損失の消滅時効が基本的に5年に統一されました。
このため、例えば今年度貸倒損失が発生し、計上後も4年程度は債権が存続していることになります。
このため、損失自体は完全に悪い方の費用ですが、取り返せるチャンスはまだあるということになります。
近年物価上昇が多いこの世の中、今の日本ではお金がない中小企業が多く、今後倒産する確率がぐんっと上がります。
なのでこの損失時効というのは覚えておきましょう。
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